犬の心疾患

その他の犬の心筋症

犬にみられるその他の心筋症についてご説明します。

食事関連性拡張型心筋症

拡張型心筋症の診断にはその病態に類似した二次性心筋症の除外が必要となります。

人では表のように多くの二次性心筋症の報告がありますが、動物でも高血圧や甲状腺機能低下症など除外可能なものを除外して診断します。


昨今、拡張型心筋症の報告が増加しており、食事との関連性が示唆されています。

FDAの調査によると多くの犬がグレイン・フリーの食事を与えられていたと報告されています。

グレイン・フリーであることが悪いのか、その他の食材による影響なのか、特定の栄養素による心筋毒性なのか、現時点(2021年11月)では結論が導き出されていませんが、標準食への変更をお勧めしております。与えられてきた期間が短いほど、食事変更による機能回復が見込めるため、早めの対応をお勧めいたします。

具体的には、専門医の意見や私見としては以下の両者を満たす食事を推奨しております。
① 豆類・イモ類がトップ10の成分に入っていない
② 穀類がトップ10の成分に入っている




肥大型心筋症・不整脈源性右室心筋症

肥大型心筋症
犬ではまれな疾患です。ポインターで遺伝が確認されていますが、それ以外の犬種での発生は散発的であり、あまり情報が蓄積されていません。


診断は主に超音波検査と、心筋肥大を生じうるその他の疾患の除外にて行います。原因不明の心筋肥大により、拡張障害が生じ心不全を呈します。

治療法は確立されておりませんが、症状がある場合には、病態に合わせて血管拡張薬、βブロッカー、利尿剤などを使用します。


不整脈源性右室心筋症(ボクサー心筋症)

右室心筋の変性や脂肪浸潤、線維化により右室壁が薄くなり収縮機能不全を引き起こす心筋疾患で、右房と右室が重度に拡張し、不整脈ならびに右心不全を生じる稀な疾患です。ボクサーに多く発生することから別名「ボクサー心筋症」とも言われます。


致死性の不整脈による突然死や、うっ血性心不全などを起こす可能性があり、抗不整脈薬や利尿剤など、状態に合わせて治療の選択を行います。定期的な心臓超音波検査やホルター心電図検査をお勧めいたします。