猫の心疾患
心筋症の治療について
βブロッカー等の内服による治療を行います。
ステージB1の治療
閉塞性肥大型心筋症
矢頭の部分は左室流出路の心室中隔正常より分厚くなっている
ステージB1でも重度の左室流出路動的狭窄など、心臓への負担が大きいと判断される場合にはβブロッカーの内服が勧められる場合があります。
矢印は僧帽弁前尖の収縮期前方運動(SAM)
左室流出路動的狭窄の一因となる
左室流出路動的狭窄のカラードプラ画像
SAMがある場合には僧帽弁逆流(矢印)も同時に見られる
左室流出路動的狭窄の血流波形
動的狭窄のため収縮末期にかけて徐々に加速するダガーシェイプとなる
ステージB2以上の治療
猫の心筋症は左心室の機能や形態の異常のいかんを問わず、左心房の拡大がある場合にステージB2と診断されます。この場合、血液のうっ滞によって血栓が形成され、血流にのって体の血管に詰まってしまう血栓塞栓症のリスクが上昇するため、血栓予防薬の服用が強くお勧めされます。
またステージB2以降ではうっ血性心不全徴候(肺水腫や胸水)の発症のリスクも上昇するため注意深い観察が必要です。しかしながら、現時点では発症を予防したり期間を延長するのに有効な治療法は確立されていません。
ステージC以降は症状がすでにあるため、より積極的な治療が必要となります。血管拡張薬、利尿剤、強心剤などを組み合わせて、状態に合わせながら用量の細かい調整を行います。循環が悪くなり腎不全や心臓悪液質を同時に発症するケースも多く、血液検査の腎臓の数値、血圧、体重、食欲、吐き気などは呼吸数と並ぶ重要な評価項目となります。
重度に拡張した猫の肥大型心筋症の左心房と、いまにも血栓を作りそうな左心房内のモヤモヤエコー像